7つの生物指標

※本ページの資料には、希少生物の生息情報の公表を控えるため、図解の省略や図面のマスキング等を施しています。

1.久木川のホタル生息地

場所・範囲

作業スケジュール

作業スケジュール(1)久木川のホタル生息地
  • 観察環境保全のため草刈(年3回)8月、11月、3月
  • 水路、水たまりの浚渫(数年でローテーション)5月、3月
  • 調査及びレポート作成
    ①幼虫上陸 3月中旬〜4月
    ②成虫 5月中旬〜7月中旬
    ③レポート作成 7月下旬〜3月上旬
  • 観察会及び環境教育EVENT
    ①観察会 5月下旬〜6月
    ②環境EVENT 3月

保全管理

自然環境の特徴

池子の森自然公園のゲンジボタルは生息地によって発生する時期に違いがあり、5月中旬に水温の高い久木池下流で発生して、水温の低い西の谷戸①では6月中旬に発生する。ヘイケボタルは地点による発生時期の違いは小さくて、6月中旬から7月下旬までみることができる。またホタルの幼虫の餌となるカワニナも多く、生息条件が整っている。ホタル類は市民の関心が高く、また健全な水辺の指標とされることがある。

利用・管理状況

  • 水路への立入は禁止。維持管理で発生した竹材等を利用して柵等を設置している。
  • 5月~7月に市民、中高校生向けのホタル観察会を実施、環境教育の場として活用している。
  • ヴィジターセンターでゲンジボタルの繁殖飼育を実施、市民に展示説明するとともに、環境教育EVENTとして幼虫の洗い出し・放流を公募市民、中高校生等で行っている。
  • 繁殖用成虫採取及び幼虫放流は、久木池下流②に限って実施している。
  • ホタルの生息環境把握のため、水温のロガー測定を実施している。(2020年11月~)

保全の目標

  • ホタルの生息環境を維持できるよう生息地の保全管理を行う。ヘイケボタルは生息環境の創出を積極的に行う。
  • 環境学習に活用できるよう、安定した個体群が維持できるような水辺環境を保全する。

管理の方針

  • 水辺にかかる樹木は適度な影になるため、カワニナの食物となる藻類の繁茂に支障がない限り残す。
  • ホタルの飛翔空間に植物が繁茂した場合は除去し、飛翔空間を確保する。
  • ゲンジボタルの生息地は、流水が適切に流れるよう倒木、落葉、堆砂の除去を適宜行う。
  • ヘイケボタルの生息地は、水たまり、湿地を維持するとともに、落ち葉や土砂が堆積しすぎないよう適宜管理する。
  • ホタルの産卵用のコケ石の設置するなど、積極的に生息環境の醸成に努める。
  • 水路への人の立入がないよう柵や看板を設置し、適宜点検を行う。

その他

  • 2016年の開園以来ホタルの幼虫・成虫調査を毎年実施して、ホタルの生息状況を取りまとめるとともに、観察会の開催状況等と併せてホタル白書として公表している。

2.ユビナガコウモリの集団が生息する洞窟及びその他の洞窟・崖ややぐら

3.池や久木川周辺の昆虫と水生生物

場所・範囲

場所・範囲(3)池や久木川周辺の昆虫と水生生物

作業スケジュール

作業スケジュール(3)池や久木川周辺の昆虫と水生生物
  • ヨシ刈り・浚渫(年1回)8月〜10月
  • 外来種駆除
    ①池(年1回)②植物(年1回)8月〜9月
  • 水生昆虫調査(期間中1日のみ)10月〜3月

保全管理

自然環境の特徴

池はヨシで囲われており、年々ヨシが範囲を広げている。
池とその周辺にはコサナエ、オオミズスマシ、サラサヤンマ、コオイムシをはじめとするトンボ類、重要とされる昆虫類が集中して確認されている。
魚類はホトケドジョウやニホンウナギが確認されている。
昆虫以外ではマシジミの生息地にもなっている。水辺の植生ではタコノアシが確認されている。
池には、外来種のコイ、アメリカザリガニ、ミシシッピアカミミガメ、ウシガエルが確認されている。外来植物はオオカワヂシャが確認されている。
カルガモやカワセミ等水鳥も多く確認されている。
ヘドロが堆積することで水位が浅くなり、高温化、貧酸素化するだけでなく、ヨシが拡大することで池としての環境は失われつつある。
ヤマアカガエル等は産卵するが、成長前に死滅しており、ヘドロの堆積による酸欠等が懸念される。
池で繁殖することが期待されるバン、カイツブリ、オシドリ等が冬しか利用しておらず、繁殖に堪えるポテンシャルではなくなっていると思われる。

利用・管理状況

  • 池や川に立ち入らないように柵を設置している。
  • 池では過去に外来種駆除を実施。
  • 2020年冬に水生昆虫調査を実施した。

保全の目標

  • 水鳥が観察による悪影響を受けないよう、渡りの時期(3月~4月と9月~11月)、繁殖期(4月~8月)、越冬期(11月~3月)にハイド(鳥を観察する場所)を設置する。
  • 水質の改善には、曝気、水の循環、好気性菌の投入などの方法もあるが、この池ではヘドロの除去が最も効果的であり、ヨシの無秩序な拡大も抑制できる。
  • バン、カイツブリ、オシドリ等が繁殖利用できる環境をめざす。
  • ニホンウナギ、マシジミなど両側回遊性の生物が生息できるよう田越川~久木川からの生態的な連続性を維持する。

管理の方針

  • ヨシ刈りを定期的に行う。幅7m以上あるヨシ群落は池側の前線を幅2m地際から刈り戻す。ただし、遮蔽性がなくなるため、陸側から池側に貫くように刈ってはいけない。その用に刈る場合は、ハイドまたはブラインドを常設する。
  • 池上流側に接する竹林は池の陸化が進む懸念があるほか、水鳥が利用しにくくなっているため除去し、ヨシ群落の侵入を促す。
  • コイ、アメリカザリガニ、ウシガエルは特に積極的に駆除し、モリアオガエル、アカミミガメはそれに準じて駆除する。駆除はイベント的な活用も検討する。
  • 汚泥吸引車等でヘドロの除去を行い、除去したヘドロは園内の谷戸にプールする。移動すべきヘドロは2020年現在150㎥である。
  • 池の上流側の川は、ホトケドジョウ、オオミズスマシの生息地であり、サンクチュアリ的に保全する。
その他(3)池や久木川周辺の昆虫と水生生物

4.シュレーゲルアオガエルの生息地

場所・範囲

作業スケジュール

作業スケジュール(3)シュレーゲルアオガエルの生息地
  • 環境整備(年1回)8月〜3月
  • 調査(卵塊確認・鳴声確認)4月〜6月下旬

保全管理

自然環境の特徴

当初の調査結果(2015年)では、公園東側の谷戸でシュレーゲルアオガエルの鳴き声が確認されたが、2019年以降確認されていない。
この谷戸は恒常的な水域は認められないが、奥部は降水後に小規模な流れや水たまりができる。そこを利用してシュレーゲルアオガエルが繁殖している可能性が高いが、現在では、その環境が消失している可能性がある。
人が放逐したモリアオガエルが侵入している。

利用・管理状況

  • シュレーゲルアオガエルが確認された奥部は立入禁止の措置を行っている。
  • レクリエーションエリアとして位置付けており、緑地エリア内では唯一、火気の使用が可能な場所でこども遊び広場として許可申請の下、プレイパークや学校のデイキャンプ等に活用されている。

保全の目標

  • シュレーゲルアオガエルの安定した繁殖地とし、毎年卵塊が確認できるよう保全管理を行う。
  • ヘビ類やサシバ等の重要なエサ資源であり、これを保全することで生態系に厚みを持たせることができる。

管理の方針

  • 令和4年度中に湿地環境を復元する。湿地面は粘土質の撹拌された土質がふさわしく、項目3で浚渫したヘドロを有効活用することができる。
  • 谷底面が緩傾斜となる谷戸では、約5~10m×約10~20mの止水域を複数隣接するように設置することで、湛水面積を確保することが出来る。
  • 項目3で発生するヘドロは150㎥であり、仮に1箇所50㎡のプールに50㎝の厚みで入れ込むとすると、このプールは合計6箇所必要となる。
  • 岸辺は産卵巣の形成を促すために2~3月に耕起する。
  • 生息数はカルガモによる幼生の食害が無いこと、アライグマによる成体の食害が無いこと、そして合計の水域面積に比例する。
  • モリアオガエル侵入による影響は未知であり、駆除を進める。
  • アライグマによる食害を防ぐため、徹底的に駆除する。
  • カルガモによる食害を防ぐため、復元した湿地は1年生の抽水植物が茂る水深1~5㎝の浅い水域とする。
シュレーゲルアオガエルの生息地

5.森林性鳥類の生息地

場所・範囲

作業スケジュール

作業スケジュール(5)森林性鳥類の生息地
  • 裾刈り、草刈(定期的に)12月〜8月
  • 調査(通年)4月〜3月
  • フクロウの巣箱設置(1回)10月〜12月

保全管理

自然環境の特徴

オオルリやセンダイムシクイ等まとまった規模の森林に生息する夏鳥が確認されている。
サシバが散見されているが、現状では谷戸の湿地が乏しく、シュレーゲルアオガエル等を捕食できないため、越夏はしていないと思われる。
オオタカは米軍住宅地がメインの生息地と思われる。
カシカダカ、シメ、イカル、ルリビタキ等、落葉樹の実や新芽を食べる冬の小鳥が豊富に見られる。
マダケ群落、マント群落、ソデ群落の拡大により、鳥類の利用エリアが狭められる恐れがある。
ナラ枯れ病の拡大により森林が減少する恐れがある。
食物連鎖の上位に位置するフクロウも確認されているが、営巣していた木が2020年に倒れてしまった。
ミゾゴイは緑地エリア内で繁殖していると思われる。

利用・管理状況

  • バードウォッチング、探鳥会が盛んに行われている

保全の目標

  • 現状で確認されている鳥類が継続して確認されること。
  • ミゾゴイの営巣地を保全する。ミゾゴイの営巣期間(4月~8月)は谷戸の立入を禁止する。
  • フクロウの営巣地確保のため、巣箱を設置する。(10~12月)
  • オオタカの生息地保全は米軍と緊密に連携し、緑地エリアに入り込んだ場合は配慮する。

管理の方針

  • ミゾゴイの営巣期間(4月~8月)は谷戸の立入を禁止するが、草刈りは定期的に実施し、人が立ち入れない芝生広場を営巣地の至近に広く確保する。
  • フクロウの営巣木が失われたため、補完として巣箱を令和4年12月に設置する。以降は、毎年繁殖期前に巣材を補充する程度の管理とする。巣箱にはカメラを設置し、育雛状況を遠隔で観察できるように工夫する。
  • 野鳥の採食範囲を狭める恐れのあるマダケ群落、マント群落を無秩序に拡大させない。
  • 森林のあり方については、「7.発達した森林と多様な食性」を参照。
ミゾゴイの営巣管理(5)巣から150m以内で人が立ち入らない谷戸の谷底面を一部芝生状に維持すると採食場に出来る

6.エビネなどの山野草

場所・範囲

作業スケジュール

作業スケジュール(6)エビネなどの山野草
  • 裾刈 11月〜2月
  • 調査(月1回)4月〜3月

保全管理

自然環境の特徴

森林内には重要種のエビネやヤマユリ、ヤマツツジなどの山野草が豊富に生息している。
2020年度には新種と思われる桜が神奈川植物誌の調査で発見されているが、新種の登録はしていない。

利用・管理状況

  • 月1回神奈川植物誌が盗掘等が行われていないかを確認するために調査に入っている。
  • 重要種については、盗掘等の恐れがあるため生息場所は非公開としている。

保全の目標

現在確認されている山野草が継続して確認できるよう周辺の保全・管理を行う。

  • 重要種については盗掘されないよう目立たせないよう保全する。
  • 確認されている山野草の生育状況が悪い場合には、植え替え等の対応を行う。
  • 裾刈りを定期的に行う。

管理の方針

  • 裾刈りは谷底面から概ね10m程度の幅で毎年~3年間隔程度で行う。緩傾斜の谷壁面を選ぶ。
  • ヤマユリ等は、2月までに裾刈りをすれば傷つけることはない。
  • エビネ、ヤマツツジ等は裾刈りで失われる可能性があるので、作業の際に誤って刈らないよう注意する。

その他

・調査の際、踏み跡をつけないように配慮する。特に希少種周辺。

里山の断面図1

戦前

里山管理をしていたころ

里山の断面図2

現在

谷底面は盛り土が多い
山裾はマント群落で覆われ、先駆樹種で鬱閉されている

里山の断面図3

整備目標

下部谷底斜面を裾刈りするが、希少種がある場合はその性質によって可否を検討する。
対象地にあった先駆樹木は除伐する。

7.発達した森林と多様な植生

場所・範囲

範囲(7)発達した森林と多様な植生

作業スケジュール

作業スケジュール(7)発達した森林と多様な植生
  • ツル切り・伐採・裾刈り 11月〜2月
  • 除草(隔週、ローテーション)4月中旬〜10月中旬

保全管理

自然環境の特徴

2020年度には新種と思われる桜が神奈川植物誌の調査で発見されているが、新種の登録はしていない。
手入れをしていないため、極相林に向かっている。
かつてはクロマツ林、カヤト(カヤ場)が豊富にあった。

利用・管理状況

  • 森林の手入れは特にしていない。散策路や園路周辺の危険木のみ対応している。

保全の目標

  • 全てを極相林にするのではなく、部分的に里山管理(コナラ林→薪、杉林→木材として活用)を行うことで、多様な植生をパッチ状に保全する。

管理の方針

  • 新品種の桜は系統保存する。ブランド桜としてまちおこし的な記念植樹を進める。植樹地としては、久木分岐点のマダケ林を除去して行うのが望ましい。
  • マダケ群落は、群落前線を純群落域まで押し戻し、群落内部は太いものを優先的に残す形で低密度化する。現在10本/㎡程度であるが、将来的には3本/㎡程度にし、発生材は各種ワークショップで活用する。対象群落は2200㎡以上である。
  • 階層構造が適当な安定的なタブノキ、スダジイ林はそのままにし、極相林、鎮守の森的に保存し、景観的にはメインの森とする。
  • コナラ林は区画を決めて輪伐し、若齢林主体とすることでアカシジミ等の昆虫類の生息環境を確保する。ナラ枯れ病罹患前のコナラも積極的に伐採し、伐採後は下草刈りをして萌芽が適切に成長するように補助する。伐採した木は薪として活用する。
  • スギ植林跡地は伐採、製材により活用する。伐採跡地は、かつてあったクロマツ林やカヤトの創出を検討する。
  • 先駆樹種の優占する緩傾斜の斜面林の一部を除伐しカヤトとして再現する。単なるススキの純群落というだけではなく、ギンイチモンジセセリやカヤネズミなど近年まで池子の森に生息していた種の生息環境として復元する。カヤトの整備は11~1月に全面を刈り取る。
  • 斜面林で伐採対象となる高木は5本/100㎡程度であると思われるが、1本で薪を10回分程度取ることができる。デイキャンプの運用と調整して整備面積を定める必要がある。
  • シロダモ、アオキ群落は、項目4の復元湿地候補地とする。
  • 枝谷戸の谷底面や山裾では、全面を同一時期に刈り込むのでは無く、一部をパッチ状に残しながら時期をずらして刈る。パッチに設定した部分も永遠に手つかずにするとパイオニア樹木が優占するため、周囲よりは低頻度で刈る。