私たちがジビエカーを作った理由

はじめに

生物多様性の危機は以下の4つに整理されています。

  • 第1の危機:人間活動による生息地の減少・劣化
  • 第2の危機:人間による環境に対するよい行いの停止
  • 第3の危機:外来種等の影響
  • 第4の危機:気候変動

このいずれか、または複数が生物多様性の自己回復力を超えたとき、その生態系は崩壊するのです。
私たちNPO法人三浦半島生物多様性保全は、人による直接的な環境破壊、乱獲等に明確に反対するのみならず、休耕、里山管理の停止による生物多様性第2の危機にも精力的に対応してきました。

私たちが行う外来生物への対応

ここでは、私たちが行う外来生物への対応をまとめてご紹介します。

外来生物による影響は、生態系や在来種に対して深刻な悪影響を与えるため、生物多様性における独立した危機として扱われています。主なポイントは以下の通りです。

① 在来種の捕食・食害

外来生物が在来の動物や植物を直接食べてしまい、個体数を急速に減らします。
例:アライグマ、ハクビシン、ウシガエル、ブラックバスなど
両生類・魚類・小型鳥類の卵や幼生が捕食される
希少種が局所的に絶滅する例もある

② 生息地の改変

外来植物や動物が生息地を物理的に変え、生態系全体を変質させます。
外来植物の繁茂(例:オオキンケイギク、セイタカアワダチソウ)により在来植物が光を奪われ衰退
アライグマなどが湿地を掘り返し、水生生物の環境が悪化

③ 競合(在来種との生存競争)

外来生物が在来種と同じ資源(餌、巣穴、縄張り)を奪い合い、在来種が負けてしまうケース。
外来魚による餌資源の独占
外来植物が養分や光を奪い、在来植物が育たない

④ 交雑による遺伝子攪乱

近縁の外来種と交雑し、在来種の遺伝子が失われてしまう問題。
鯉、クサガメ、カブトムシなどの交雑が知られる
根絶がほぼ不可能なため極めて深刻

⑤ 感染症の持ち込み

外来生物が新しい病原体を持ち込み、在来生物が耐性を持たず大量死するケース。
カエルツボカビ症など
人間の家畜・農作物にも被害が及ぶ場合がある

特に三浦半島で影響が深刻なものについて、駆除というかたちで対応しています。
例えば水辺を覆ってしまうオオフサモ、人身への被害があるカミツキガメ、希少種の食害が激しいアライグマなどです。

特にアライグマは行政が中心となって駆除を進めており、三浦半島全体で年間600頭ほど捕獲されています。我々も年間200頭ほど捕獲しています。かつては、アライグマの日本における生態の基礎研究が盛んに行われており、様々な大学で検体として活用されていました。しかしながら、これらの研究が一巡りしたことでこのような学術利用はほとんどなされなくなりました。ハクビシン、クリハラリスも状況は同じです。

野生生物の命を奪うことについて

ところで、野生生物の命を奪うことについて、みなさんはどうお考えですか。ライオンがシマウマの命を奪うのと、人がアライグマの命を奪うのと、何が違うのでしょうか?

それはもちろん、食べるため、生きるため、という生物である以上は避けて通れない目的が存在するか否かということです。私たちは外来生物の駆除をするとき、この命の循環が断ち切れることに対して強烈な違和感を感じてきました。

2017年、駆除した外来生物の命の循環をテーマに「ふたTSUKI」という飲食店を2ヶ月限定で展開しました。アメリカザリガニ、ブラックバス、アカミミガメなどを食材として活用し、外来生物問題の啓発と駆除個体の命に向き合いました。そのときにできなかったのは、アライグマです。

アライグマをはじめとした、ほ乳類の肉は食品衛生法、屠畜場法により食肉処理場で処理することが必須になります。ですから、狩猟したイノシシを野外で精肉して流通させるなどといったことは違法行為になり、ヤミ肉と言われる衛生的に問題のある食品になります。学術利用がなされなくなったアライグマは現在全て燃せるゴミとして処分されています。この部分を解決するために、食肉処理業の許可取得を目指す長い旅が始まりました。

新たな循環

ジビエ アライグマ

神奈川県下の行政捕獲は県の計画に基づいて行われています。まずは県の協議会に理解を求めるため掛け合いましたが、結果は悲惨でした。新たなことは何もしない、変えないという、極めて保守的な協議会で議論にはなりません。捕獲従事者の心理的配慮についても特段県として対応する考えはないという姿勢で、県の賛同を得ることは諦めざるを得ませんでした。

独自に全く別の循環を構築することを考えることになりました。横須賀市の自然環境共生課と保健所との協議を重ね、結果的に、ジビエカーと呼ばれる車両での食肉処理をする方向で話がまとまり、ヤフオクでトラックの中古車を買って改造作業を行いました。自動車メーカーが販売しているジビエカーは1500万円ほどだそうですが、今回200万円ほどで作ることができました。

ついに2025年10月に食肉処理業の許可が下りることになります。ここまで足かけ6年かかりました。

衛生的な設備で鮮度の高いアライグマ肉は臭みもなくとても素材としてポテンシャルが高いと感じています。ただし、どう逆立ちしても健康管理をされていない野生動物ですので、取り扱いを間違えれば人獣共通感染症に感染してしまいます。ここでは、衛生管理上厳しい要件を満たすことができる飲食店に限って卸すこととしています。生肉での小売りはしませんので、どうぞ市内のレストランにてお食事ください。

目標 これからのこと

さて、私たちは外来生物を使って金儲けをしようとか、持続可能なビジネスをしようと行った意図は全くありません。

現状、捕獲数も伸び悩み、おそらく年間の駆除数と繁殖数が拮抗しているために根絶に至らないという状況かと思います。

ここで新たな方面からのアプローチ、外来生物を食べるという取り組みが始まることで、捕獲に協力する人が一人でも増えていけば、早期に根絶が完了し、将来生まれてきて駆除される運命だった命を奪わなくて済むことにも繋がります。私たちは、早く外来生物駆除をやめたいし、外来生物のためにも早くやめてやりたいのです。

おいしいから自分も捕まえてみたい、そんな魚釣りに行くくらい軽い気持ちの人でも構わないので捕獲が進めば、結果的にそれが生物多様性と命の尊厳を守ることに繋がります。

捕獲に協力してみたい、というかたは「お問合せ」よりご連絡ください。

2025年11月27日 NPO法人三浦半島生物多様性保全

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