外来生物のこと
自然に分布域を広げたのではなく、人の力でその生き物が本来いなかった地域に移動してしまったものを、外来生物といいます。
荷物に付着するなど気づかないうちに運んでしまったり、ペットを捨てるなど意図的に野外に侵入させてしまうなど、そのきっかけはさまざまです。総じて言えることは、人が野生生物を生きた状態で遠くに運搬できる力をもってしまったと言うことです。
そのために、これまで長期間にわたり地域で形成されてきた生態系が乱されています。
開発や里山管理停止による環境破壊だけでなく、谷戸田は多くの種が複雑に共存しているデリケートな水辺環境であるために、アメリカザリガニ、アライグマ等の外来生物が侵入することでの悪影響(生物多様性第3の危機 参照:※図)も大きいのです。
そして、そうした水辺は、気候変動による温暖化の影響も受けやすく、最近、報告されているカエルやサンショウウオの産卵期が早まっているという影響(生物多様性第4の危機 参照:※図)は三浦半島でも見られるようになるのではないかと危惧しています。
希少生物を補食してしまったり、植物群落を覆ってしまったり、植生を破壊してしまう「侵略的外来生物」が最も注目されています。主に海外から来たような、ハンティング能力や適応力が強い動物や、拡散・拡大能力の強い植物がこれにあたります。「世界の侵略的外来生物ワースト100」のなかには、我々が親しんでいるネコ、コイ、ワカメ、クズなども含まれています。
ここでは現在三浦半島でもっとも侵略的な海外原産の外来生物のうちのごく一部を紹介します。
オオクチバス
釣り人の密放流等により第繁殖した池では、小さな種類の魚やエビなどは一切いなくなりました。
コイ
水底の植物や昆虫を泥と一緒に飲み込み、都市河川や講演の池の水底は無毛の砂漠のようです。
アメリカザリガニ
繁殖力が旺盛で、水草や昆虫を食い尽くします。一度侵入すると取り去るのが不可能に近いです。
タイワンリス
これまで茂みの中は安全だと思っていた小鳥の巣や昆虫に影響を与えています。三浦半島全域に定着しました。
ネコ
小鳥に打撃を与えています。野生化した猫はタヌキやアライグマの2〜3倍も生息していると思われています。
アライグマ
水辺の生物を執拗に採集する習性があり、こうした捕食者に耐性のない生き物は壊滅しました。
モウソウチク
山を駆け上がり既存の樹林を枯らしながら群落を拡大しています。あちこちで純群落を形成しています。
トキワツユクサ
小さい植物ですが、林床覆う勢いで増殖します。在来の草の生育する環境を狭めています。
ソライロアサガオ
緑のカーテン用に最近流行していますが、いったん野外に逸出すると樹木や草原に覆い被さって枯らします。
三浦半島にも同じ種類がいたり、近縁の種類がいると交雑してしまう外来生物です。
地域の生き物は、自然誌によって長い期間をかけて作られた固有の遺伝子を持っています。それは単にいろいろな色や形をしているというだけではなく、地域の気候風土に適応するために変化してきた結果なのです。
この問題は、特定の種類が危険なのではなく、地域にいる全ての生き物について、近縁の種類を他地域から持ち込むと起こりうる生物多様性の被害です。
一緒にしてはいけない組み合わせ例
キジ
趣味の狩猟のために放鳥されていました。在来のシメキジは既にいなくなっていると思われます。
カブトムシ
いろいろな地域のものが安価で入手できますので、逃げないよう厳重に施錠飼育されている例は皆無です。
メジロ
趣味で野鳥を飼育していることがりますが、放鳥された場合在来のものとの見分けは困難です。
メダカ
いろいろな地域のものが出回っています。いま都市河川でみられるメダカはほとんど放逐個体です。
クサガメ
在来のイシガメと交雑を起こします。クサガメだけでなくあらゆる種類の亀に注意が必要です。
ホトトギス
山野草も各地の様々なタイプが出回っていますが、花粉が飛んで混ざってしまうこともあります。
ニホンアカガエル
オタマジャクシで地方から持ち込む例があるようです。写真は、くりはま花の国に放逐されていた個体です。
ヤマハギ
のり面緑化などで郷土種を植えることがあるようですが、どの地方由来の苗か区別しないこともあります。
トウキョウサンショウウオ
趣味で希少種を放す人がいます。大山林道にいるこの個体は残念ながら人為分布です。
最も身近に見られるあの生き物も、実は海外原産の外来生物ということがあります。植物ではもっと多く、近くの公園でみられる雑草のほとんどが外来生物かもしれません。
クロゴキブリ
ドバト
キボシカミキリ
ラミーカミキリ
オカダンゴムシ
アカボシゴマダラ