NPO法人三浦半島生物多様性保全では、谷戸田の復田を中心に、管理の手が離れた里山での伝統的管理を再開しています。
主な保全サイト

田んぼの多くは私有地で、地権者の方のご厚意で保全させていただいています。
無断立ち入りはできません。観察等ご希望の際は当会までお問合せください。
沢山池の里山
横須賀市「里山的環境保全・活用事業」の一環で復田している、横須賀市長坂に位置する谷戸です。昭和10年頃に作られた沢山池に隣接していますが、今はこの池は役目を終えて水がほとんど抜かれてしまっています。
田んぼは長年休耕されていたために、ほぼ全面がアオキやアズマネザサの群落となっており、田んぼだった当時の面影はほとんど残っていません。湿地の生き物もかなり減ってしまったと思われましたが、一部を水田に戻したところ、すぐにシュレーゲルアオガエルやヒメゲンゴロウが観察できるようになりました。
2013年から徐々に復田を始め、多くのボランティアと長坂地域の学校や町内会の方々に支えられて賑わっている(約50000㎡〜)フィールドです。
2018年からは、(公財)日本自然保護協会、(株)ラッシュジャパンと協働で、サシバの舞うような生物多様性の高い谷戸を再生させる取り組みを開始し、現在までに約4000㎡の水田や湿地を新たに復元しました。また、ここで取れたお米や稲藁は、ラッシュが生産するオーガニック製品の原材料として使われています。
久保・二俣
三浦半島は、横浜市南部から逗子市、葉山町、横須賀市へと標高200m級の三浦丘陵が連なっています。
しかし横須賀市長井と三浦市だけは、高くても標高50mほどの台地で形成されている土地です。
その横須賀市長井に位置する三浦半島では珍しい台地性の谷戸田です。
長年休耕されていたためにヨシやキショウブが一面繁茂していますが、2013年から徐々に復田を始めています。
ようやく水がたまり始めた湿地ですが、この先ここではいったいどんな生き物が保全されてくれるでしょうか。
環境への意識の高い地元有志のかたと協働で、現在は月に2回の定例の作業日を設けたり、田んぼ体験ワークショップを開催したりしています。
約2000㎡
池下
三浦市最大の農業用水池、小松ヶ池の水をひいてこしらえている田んぼです。
三浦市は冬作の野菜作りが大変盛んで、水田のように経済性の低い圃場はほとんどすべて埋め立てられてしまいました。
導排水等の近代的な圃場整備がされた水田はまだ数カ所残っており、農家さんが自家米として作っているところがありますが、「池下」のように圃場整備がされないまま残っている谷戸はここを含め3カ所しかありません。
その中で、実際に田んぼとして保全されているのは三浦市内では唯一です。
三浦半島では貴重となってしまった台地性の谷戸で、激減してしまったニホンアカガエルも観察できます。
ここでは「三浦の自然を学ぶ会」と協働で2010年から保全しています。
約1000㎡
大谷戸
葉山町木古庭に位置する谷戸で、大半は横浜横須賀道路の造成時に埋め立てられてしまっています。葉山町の里山の魅力創出事業として、2018年から復田や草地の保全作業を中心に活動を行っています。
特に造成跡地にできた広大な草地は、かつて点在していたカヤトの環境を彷彿とさせ、ノウサギやホオジロなど草地性の生物を身近に観察することができます。水田は全面がアズマネザサ群落となっており、復田が完了するまでには時間がかかりそうです。伐採した木はチップ化し、歩きやすい遊歩道にしてあるので畠山まで登ることができます。今後は農体験や自然観察会等を通して、下山川流域に多く眠っている谷戸田再生の先駆けになればと思っています。
約20000㎡
芝ノ田
横須賀市長坂に位置する、5段ある田んぼです。農業委員会からの依頼で2020年から保全活動を始めています。周囲は畑と住宅地が多く、この地区の中では唯一の水田となります。1980年代から休耕されており、現在は水源も断たれていますが、雨水を使ってなんとか水を溜めています。地形としては大きな谷戸の一部分で、木立も無いところですが、野鳥のちょっとした休息場所として、この周辺では大切な場所になっているようです。さっそくアマガエルやヤマアカガエルがどこからともなく訪れるようになりました。冬場は麦を作付けしながら、徐々に土を作っていこうとしています。約3000㎡
焼木
横須賀市岩戸の焼木の谷戸です。農業委員会からの依頼で2020年から保全活動を始めています。何人もの地権者が持っている広大な谷戸ですが、そのうちの一部を地元の小学校と一緒に復田しています。休耕歴は大変長く、1960年代からのようで、既に飽和状態のササ藪や大径になったエノキなどが生えるうっそうとした状態です。田んぼの地形を再現する荒療治から始めています。さっそくアマガエルやアキアカネが訪れるようになりました。この古道をゆくと、佐原、岩戸、久村へ抜けることができます。約1000㎡
堀越



横須賀市長坂に位置する、谷戸よりも開けた農村環境です。周囲には見事な茅葺きの農家が何軒も残っているような地区です。休耕歴は30年程度ですが、草刈りを定期的にされていたたために畔の植物はよく残っており、秋にはワレモコウやオグルマなどがきれいに咲きます。また、キジやフクロウが住み着いており、湿地の茂みの中からはヒクイナの鳴く声も聞こえてきます。狭い谷戸よりも開けた水田で、周りの環境とセットで残っているのは三浦半島では大変貴重です。所有者の援農として2020年から保全活動を始めています。敷地内の納屋では、唐箕や桶など三浦半島内で改修した古民具を整理しながら、今でも現役で使っています。約3000㎡
佐左衛門では2033年の茅葺き屋根復原を目指して寄付を募っています。
妙蔵寺
横須賀市池上の妙蔵寺の境内にある、樹林や竹林を中心としたみどりです。2012年から保全活動を始めています。周囲は住宅街に囲まれていますが、1haにおよぶ森にはフクロウやタヌキが生息し、たくさんのカエルや昆虫で賑わうようになりました。近所の子どもたちのオアシスにもなっています。妙藏寺では、ここの竹を使って竹灯篭を作り、大晦日の除夜の鐘のデコレーションとして活用しています。また、様々な希少生物の種の保存にも協働で取り組んでいます。
高祖坂
葉山町木古庭で奇跡的に一度も休耕歴のない谷戸で、所有者の高齢化により2019年から援農として保全活動を始めています。ずっと水をたたえていたことから、水路にはドジョウもまだ生息しています。奥には溜池があり、家周辺の果樹のほか竹林、杉林、楠林がまとまって存在している、里山の風景として安定的に環境が保たれているフィールドです。立派な藏や長屋門があります。外来生物のモリアオガエルが増えてきていることが気がかりです。既に2割程度休耕している部分があり、徐々に湿地を再生できればと考えています。