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コラム

観察者から証明者になろう

先日ある行政の環境会議で、市長がおっしゃっていたことにはっとしました。「観察も良いけど、市民の利益も考えないといけないよね」。一般には、観察はごく一部の専門家が勝手にやっていることで、普通の市民生活に絡むことはないと思われているのかも知れません。もちろんそんなつもりはないのですが、観察してきた膨大な蓄積を世の中にきちんと還元できているかと問われれば、個人的な興味として胸の内にしまってしまっていることもあるかもしれません。

自然観察から得た情報を、自然誌資料として上手に活かすことができれば、これまで自然と疎遠だった人にも少しは関心を持ってもらえるかも知れません。情報は学会や博物館の論文、「自然のたより」など市民団体の会報など、重要性などを考えながらさまざまな媒体に投稿することでオープンにできます。また、自然の中で得られる感動や驚きは、観察会・体験会を通して共有することができます。観察をしていると、自然からの落とし物を発見することがよくあります。その時は、記録として文面や写真に残すだけでなく、拾っても生態系に影響がないものであれば拾って、形に残すことをできればもっと公表できる裾野は広がるかなと思います。なるべく私する情報を減らすことを、意識的に心がけたほうが良いかなと、あらためて思いました。

もちろん、盗掘の恐れのある希少種情報などは厳しく管理する必要もお忘れなく。

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今回はミゾゴイが須軽谷で死んでいたとSUさんからSHさんに連絡が行き、SHさんから僕に連絡が来て、さっそく拾って受け渡していただきました。解剖してみると、胸に動脈まで達する穴が開いていました。もしかするとオオタカなどに襲われたのかも知れません。剥製にする技術を身につけたので、残すことができました。いずれどこかで展示できることを心待ちにしています。博物館も、拾ってくる死体全てを剥製にする予算はないそうです。貝殻や昆虫の標本などをアマチュアでやっている人口はそれなりにいるようですが、剥製まではなかなか手が出ず、いつも置き去りになっている個体がいるのではないでしょうか。僕もその思いから、(でも外注するとお金がいくらあっても足りないので)自分でやるようになりました。もし素敵な(?)死体を拾った際は、ご一報いただけますと幸いです。