私たち三浦半島自然保護の会の60年余りの歴史は、自然破壊を見つめてきた歴史でもあります。具体的に例を挙げれば切りがありません。しかもその自然破壊は現在も進行中です。つまり時代時代で開発の手から逃れた自然環境が次世代に受け継がれず、次の時代に開発されてしまう図式です。
その中でも量的に大きく残された自然環境があります。例えば横浜市瀬谷区にある上瀬谷通信施設跡地です。米軍によって昭和26年に接収されましたが、平成27年に返還になった広大な土地です。横浜市では土地利用計画の策定を進めているようですが、その中で国際花博やテーマパーク誘致の構想を打ち出しました。
皆さんはテーマパークというとどんな施設を思い浮かべるでしょうか。多くの方が東京ディズニーランド、東京ディズニーシー、USJなど複合型行楽施設を思い浮かべるでしょう。これらは総合的なテーマを決めた遊園地です。これらの遊園地では「ディズニー」や「ハリーポッター」など西洋の非現実的な架空空間を作り出すことで人気を博しています。人が多く集まることで経済的には潤いますが、行政がこれを誘致する必要があるでしょうか。
経済的には潤わなくとも日本の文化や自然環境を後世に残すためのテーマパークがあっても良いはずです。多くのテーマパークが経済的に破綻して閉園に追い込まれた過去がありますが、初めから経済効果を期待しなければ破綻はないと考えてよいでしょう。
規模の小さなテーマパークとしては、昭和の物品などを集めた懐古的なテーマパーク、子供が職業体験できるテーマパーク、時代劇の街並みを再現したテーマパークなどもあります。自然環境的なものとしては横浜の舞岡公園なども里山環境を題材にしたテーマパークと言えるかもしれません。舞岡公園は入場無料で大きな経済効果(大儲け)は望めませんが、人の心を癒す効果や自然環境を保全する効果は大きいはずです。
テーマパーク=西洋文化的な遊園地=お金が儲かるという図式ができ上げっていますが、税金で行う施策としては市民に平等に、しかも恒久的に価値のあるものを作る必要があると思います。
自然環境を保全しながら誰もが楽しめるテーマパークのアイデアとしては、古くは「コロボックル」や「隣のトトロ」などをテーマとして、100年前の農村の風景…田畑や家屋など…を復元してその中で自然体験や農業体験できるものが考えられます。そのテーマパークにはサンクチャリ(野生動物の聖域)を取り入れたり、発展させたりすることも可能でしょう。希少になりつつある在来の生き物を保全して、外来種を排除する特別保護区にも為り得るでしょう。そして100年後の人々には200年前の風景として更に貴重であるに違いありません。大きな問題としては私たち市民がそれを望むか、それを受け入れるかということです。